土地の面積に直結し、不動産の価値も決まってくるだけに、境界の確定はとても重要です。一方で境界に関する事柄はトラブルが起きやすいのも事実。「マンション取引は境界がないので楽」と言われるくらいです。では、土地と土地付き戸建ての売主様は、境界についてどこに気をつけたらいいのか。今回は、そこを説明していきましょう。
売主様には境界を明示する義務がある
境界杭が失われた状態であっても「公募売買」である旨を説明した上で売買契約を進めることが多いのは前回お話しした通りです。しかし、それは後々、確定測量を実施し、境界杭を再現することを前提としています。
ところが、不動産会社によっては、公募売買であることに加え、「売主は確定測量を行わないものとする」などという特約を付加し、現況測量を実施しないところも見受けられました。
しかし、それでは住宅ローンの審査が通りません。そのため、さすがに最近ではそんな乱暴なやり方をする会社も少なくなってきたようです。とはいえ、住宅ローンが介在しない、現金決済のお客様の場合、確定測量を実施しない会社は存在します。もちろん、境界がしっかりと定まっていない土地など購入すべきではありません。安価な土地を購入する際は注意が必要です。
境界杭は皆さんが思っている以上に消えやすいものです。金属製のプレートや鋲などは、設置から5年以上経過すると埋まっていたり、紛失していたりします。境界杭は境界を明示するためのものなので、欠けていたり、位置が識別できない状態のものはアウトです。
物件を引き渡す前に、売主様には境界を明示する義務があります。引き渡し日の1週間ほど前に売主様と買主様、仲介の不動産会社が集まり、測量図を見ながら「ここが境界です」と明示しなくてはいけません。その時に「ここは境界杭がないんです」「ここはちょっとわかりません」では通用しないわけです。
境界を巡るトラブル
確定測量では、隣地土地所有者、つまり、隣の家と売主様が揉め事になることがあります。現地で隣地土地所有者に立ち会ってもらい、境界を確認する際、「祖父の代からウチの境界はもっとこっちだよ」などと言い出す輩がいるんです。
きちんと測量して「間違いなくここです」と言っても、「そんなことはない。このブロック塀までが境界だと祖父から聞いていた」などと言い張るわけです。なかなか納得してもらえないまま、時間だけが過ぎてしまい、引き渡し日を延期せざるを得ないようなことも稀にですが、あります。
また、よくあるのが、隣の家の一部が売主様の土地に越境しているケースです。隣の家の塀などがこちらの土地にはみ出している、ということは珍しくありません。このような場合、まず、買主様への重要事項説明書に明記しておきます。例えば、「隣の家の木の枝が越境してきています」と、ありのままを伝えるわけです。
次に解決策ですが、現地をあるべき状態に回復させることは現実問題として不可能と言えます。木を伐採してもらうこと程度なら可能かもしれませんが、「今すぐ塀を撤去してください」とは言い辛いですし、言い方によっては新たな火種にもなりかねません。
そこで、売主様と隣地土地所有者が話し合いを持ち、覚書を交わします。「知らない」と言われても、実際に計測した結果は動かぬ証拠ですから、「建て替える時は、きちんと境界を守ること」と約束を交わすわけです。これについて買主様にはきちんと説明し、納得してもらうことは言うまでもありません。
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