売主様が何らかの理由によって不動産の売却を止めることを、不動産業界では「売りやめ」と言います。「売る気がなくなった」「賃貸に出すことにした」など、その理由はさまざま。では、売却を中止した場合、費用はどうなるのでしょう。
売主様に費用負担は生じない
結論から先に言えば、売却を中止したとしても売主様の費用負担は発生しません。したがって、仲介手数料は払う必要がない、ということになります。
不動産会社としては、売りやめは売主様からせっかく物件をお預かりしたのに、正直なところガッカリです。すでに販売活動をスタートさせており、販促費などを使っている可能性があり、費用が発生している場合がほとんどだからです。
仲介手数料は「売買契約が成立したら売買価格の3%をいただきます」という、成功報酬の形をとっています。売りやめにした場合、売買契約まで到達することなく、仲介が成立していませんから仲介手数料は発生しません。したがって、売主様に支払い義務は生じないわけです。
一方、販売活動にかかる費用のほとんどは不動産会社の負担になります。売主様の物件を販売するためにポータルサイトに出稿したり、紙の媒体を制作したりといった広告宣伝費や販促費は、不動産会社が持たなければいけません。
そのため、なかには「売りやめを止めてください」と説得する不動産会社もあるかもしれません。「広告費かけたのに、そんなこと言わないで。考え直してください」「有望なお客様がもういますから」などなど……。
売主様としても「いろいろやってもらって、費用も使わせてしまった。申し訳ない」と心を傷める人がいるかもしれません。また、「かかった費用は売主が負担しなくてはいけないのでは」「“媒介契約”を結んでいるのだから、違約金が発生するかも」と心配する人も多いようです。
繰り返しになりますが、販売活動にかかった費用を売主様が負担する義務はありません。また、違約金も発生しないのでご安心ください。ただし、例外があるとすれば、売主様が自分で依頼した広告費用などは払う必要があります。たとえば、売主様が「チラシを何千枚織り込んでほしい」と不動産会社に頼んで製作したものに関しては請求されるケースがあります。
大きく異なる「売りやめ」と「売りどめ」
不動産を売却する理由がしっかりと固まっていなければ不動産会社との媒介契約には至らないため、それを途中で反古にする「売りやめ」はレアケースです。実際のところ、弊社では、これまで売りやめは1回もありません。
売りやめの理由として多いのは、不動産がなかなか売却できないケースにあるようです。売りに出してから半年、1年が経っても売れない。不動産会社は「値段を大きく下げないと売れません。下げてください」ばかり言ってくる。「そんなに値段を下げてまで売りたくないので、売るのを止めます」と売主様の心が折れてしまうパターンがそれ。不動産会社の態度や姿勢にも原因の一端がありそうです。
ちなみに、「売りやめ」は「売り止め」とも書きますが、「売り止め」は「売りどめ」と呼ぶケースもあります。「売りどめ」は、販売活動を一時的にストップしている状態のこと。購入希望者と商談に入ったため、いったん販売を中止にする場合に用います。
条件の折り合いがつかなかったり、住宅ローンの承認が下りないなどの理由で商談がうまくいかなかった場合、「売りどめ」を「販売中」に戻すこともあります。
このほか、専属専任媒介契約や専任媒介契約を結んだ不動産会社が、自社で買主様を見つけるために“悪さ”をすることがあります。他の不動産会社に物件の情報を流さず、問い合わせにも応じない「囲い込み」がそれ。「売りどめ」は、「囲い込み」を行うために悪用されることがあるんです。
物件の「売りどめ」や「囲い込み」が後を断たないことから、2016年、レインズに「ステータス管理機能」が追加され、売主様が取引状況をチェックできるようになりました。とはいえ、まず重要なのは、あらかじめ信頼できる不動産会社を選んでおくことです。
弊社ではセカンドオピニオンの相談を無料で承っています。現状に疑問や不満を感じている売主様、ぜひ一度ご相談ください。