Q:近隣と騒音トラブルを抱えている場合、どうすれば?
「住まいを売却したいけれど、ご近所と騒音問題でトラブルを抱えている」。これ、意外によくある相談です。目に見えない問題だけに、感じ方は人それぞれで一筋縄ではいきません。そんなお悩みを抱えた住まいをスムーズに売却するにはどうすればいいのでしょうか。
騒音トラブルの告知義務はないものの……。
ひと口に“騒音トラブル”といっても、大きく2つに分けることができます。まずひとつは、自分たちが騒音を発しているケース。たとえば、マンションに住んでいて「小さい子供が2人いて、いくら注意しても、おとなしく静かにできない。下の階から『足音がうるさい』と頻繁に苦情がきて辛い」という理由から、いまの住まいを売却して引っ越したいと考えるケースがあります。この場合、売却に特に支障はありません。売主様は、次の住まい選びに注力すればいいでしょう。
厄介なのは近隣からの騒音です。上の階や隣の部屋がうるさいから、いまの住まいを売却して引っ越したい、というケース。これは普通のことではありません。賃貸なら引っ越すのは比較的容易ですが、せっかく購入した住まいを売却してまで他所へ移りたいというのですから、まさに“トラブル”と言えます。
もちろん、マンションだけでなく、一戸建て住宅も騒音のトラブルは無縁ではありません。「近所によく吠える犬がいる」「向かいの家のテレビやラジオの音量が大きすぎる」「隣の家は夫婦喧嘩が絶えない」などなど、むしろマンションより“火種”は多いかもしれません。
そうした騒音トラブルを売主様は不動産会社にどう伝えるべきなのでしょう。騒音トラブルに関して、売主様に告知義務はありません。しかし、ここは正直に、ありのままを不動産会社に伝えたほうがいいでしょう。後々のトラブルを未然に防ぐためです。
不動産会社は経験を重ねたプロ。売却理由をお伺いすると、「え、そんな理由で?」という売主様もなかにはいらっしゃいます。どうにも腑に落ちず、「この売主さん、なにか隠していることがあるのでは?」ということが感覚的にわかるわけです。したがって、不動産会社はプロとして深掘りしなければいけません。
トラブルがあることを知らないまま売却してしまっては、自分の首を絞めることにもなりかねません。不動産会社は売主様からきちんとヒアリングするべきですし、聞いた話は買主様候補に伝えるべきです。そして、その状況の中で最大限の努力をするべき。不動産を扱う者としての仕事のあり方が問われるとも言えるでしょう。
双方の話し合いで“落としどころ”を決める
騒音などの近隣トラブルについては、不動産会社にも告知義務はありません。かといって、売却後になにか問題が発生しても知らないふりで通せるかと言えば、そうとは限りません。つまり、グレーなわけです。売却後にトラブルが発覚し、買主様から「なぜ言ってくれなかったんだ。知っていたら買わなかったのに」と揉めてしまい、裁判沙汰になることも。結果はケースバイケースですが、トラブルを未然に防ぐ意味から、不動産会社はきちんと聞いて正直に伝えるべきなんです。
では、実際の販売活動ではどのように話を進めるのでしょう。騒音などのトラブルは、販売図面に記載するものではありません。そのため、買主様候補を物件にご案内して、「ちょっと検討してみようかな」と前向きになったところで「実は、こういうことがあるんです」と切り出すしかありません。
そして、最終的な落としどころとしては、販売価格をあらかじめ相場より安めにしておくかなど、ケースバイケースになります。たとえば、販売価格を安めに設定した場合、「価格にはこういう理由があるんです」と早めの段階で買主様候補に伝えて整合性をとります。いずれにせよ売主様と買主様の双方が納得すれば問題のない話なので、方法はいろいろと考えられるでしょう。
地域密着の不動産会社は、さまざまな情報をキャッチしているものです。売主様以外からの情報も、必要とあらば当然、買主様候補に伝えます。地域に密着した街の不動産会社として仕事をしているのなら、良い情報も悪い情報も包み隠さずお客様に提供するのは務めだからです。スムーズな売却を実現するためにも、売主様は積極的に情報を提供しましょう。